『かいじゅうたちのいるところ』のひみつ

"WHERE THE WILD THINGS ARE(かいじゅうたちのいるところ)"という名作絵本があります。
この絵本は世界中で約2000万部も売れ、大人も子供も、多くの人たちから愛されつづけている絵本です。
私も子供たちが小さいころにこの絵本に出会い、一気にその世界に引き込まれました。
当時、メールアドレスの一部を"wildthings"にしていたほど(笑)、私自身が大好きになった絵本です。
この絵本の素晴らしいところは、絵や物語が優れているところだけでなく、読者を引き込む「工夫」がされているところです。

上の絵は物語がはじまる最初のページです。
マックスがいたずらを始めているシーンなのですが、この後、いたずらはどんどんエスカレートしていきます。
そして、とうとうお母さんに夕飯ぬきで自分の部屋にほうりこまれてしまいます。
するとマックスの部屋にどんどん木が生え出して森になっていきます。
そのシーンの絵が下の写真です。

お気づきになりましたか?
絵がどんどん「大きく」なっているんです。
マックスの心が解放されていくのに合わせて、絵の大きさが変わっていくんですね。
そして、マックスはボートに乗って旅に出かけます。
そしてたどり着いたのが「かいじゅうたちのいるところ」。
そこで、マックスは恐ろしい大きなかいじゅうたちを手なづけて、かいじゅうたちの王様になります。
かいじゅうたちはマックスの言いなりになって「かいじゅう踊り」をはじめます。
ここで、マックスの心は完全に解放されます。

余白の部分がなくなって2ページぜんぶに絵が広がっていますね。
著者のモーリス・センダックはマックスの心の変化に合わせて絵の大きさを変えていくことで、読み手もマックスと同じ真理変化を体験できるように工夫したのです。
これが、この絵本が長い間、世界中で愛されつづける一つの理由だと思います。
この後、マックスは自分の部屋に戻っていくのですが、絵はまた少しずつ小さくなっていきます。
想像の世界から、現実の世界に戻っていくのを表現しているんですね。
そして、自分の部屋にはお母さんが作ってくれたホカホカの夕飯がおいてあります。
この最後の絵の大きさは、最初の1ページと比べると少し大きくなっているのがわかります。
それは、マックスが心を解放して、自分を愛してくれる人の愛に気づいて、少し成長できたことを表現しているのだと思います。
何十回、何百回とこの絵本に触れてきましたが、読むたびに新鮮な感動をあたえてくれる素晴らしい絵本です。